庇(ひさし)と軒、下屋の違いとは?設置するメリットや注意点、軒ゼロ住宅についても解説
「庇と軒、下屋の違いを教えてください」
こうしたご質問を頂くことがあります。
家づくりやリフォームの打ち合わせで、「庇(ひさし)」「軒」「下屋」といった言葉を耳にする機会は多くあります。
しかし、似たような言葉で、結局どこが違うのか、我が家に必要なのか、分からない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、庇、軒、下屋の違いを整理した上で、設置するメリットや注意点、近年人気のある「軒ゼロ住宅」といった話題についても分かりやすく解説します。
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目次
■庇:窓や玄関ドアの上に設置する小さな屋根
■軒:屋根が外壁より外側に飛び出た部分
■下屋:大屋根とは別に設けられた一段低い位置の屋根
■庇、軒、下屋の使い分け方、設置するメリット
■庇、軒、下屋を設置する際の注意点
■近年増加する「軒ゼロ住宅」について
■まとめ|庇、軒、下屋の適正な使い方で雨や日差しをコントロール
庇:窓や玄関ドアの上に設置する小さな屋根
庇(ひさし)とは、窓や玄関ドアなどの上部に取り付ける、小型の屋根を指します。
屋根本体とは異なる部材として設置することとなり、存在感を抑えながら雨除けとしての役割を果たします。
改めて、庇の主な役割は、以下の4つです。
- 雨よけ:窓や出入り口に雨が当たることを避け、吹き込みによる室内の濡れを防ぐ
- 日除け:夏場の強い日差しが入り込むことを避け、室温上昇や眩しさを軽減する
- 汚れ防止:雨が当たることによる窓まわりの汚れを防ぐ
- 利便性向上:雨の時、傘の開閉、宅配物の受け取りなどの動作が楽になる
軒や下屋との違いは、ピンポイントに雨や日差しを避けられるということです。
「ここに雨を当てたくない」という箇所に対して、簡易に対策を取れます。
軒:屋根が外壁より外側に飛び出た部分
軒(のき)とは、屋根が外壁よりも外側に張り出している部分を指します。
庇のように、「目的に合わせて別途取り付けたもの」ではなく、屋根と一体となって建物を守るイメージです。
軒の役割
軒の役割は、主に次の3つです。
- 外壁の防護:直射日光や雨から外壁の塗装やシーリングを守る
- 日差しのコントロール:適切な軒の設定で夏は直射日光を遮り冬は取り込む
- 雨水の降り込みを防ぐ:長い軒の出でウッドデッキやサッシへの雨を防ぐ
「軒先、軒下、軒天」についても確認
「軒」に関連する用語は複数あります。
設計者に要望を伝える際に適切に伝達できるよう、言葉の意味を把握しておきましょう。
- 軒先(のきさき):軒の一番外側、屋根の端
- 軒下(のきした):軒の下部空間(外壁の外側でありながら、雨が当たらない)
- 軒天(のきてん):軒の裏側の天井面(軒裏とも呼ぶ)
▶︎関連コラム:【軒天を木目調に】5つのデメリット・後悔を確認│費用や素材選びなど、対策も解説
下屋:大屋根とは別に設けられた一段低い位置の屋根
下屋(げや)とは、大屋根とは別に、1階部分に差し掛かるように設ける屋根を指します。
玄関ポーチや勝手口まわり、縁側のような空間に利用されます。
庇との違いは、下屋の方が一般的に寸法が大きいことです。
庇が人1~2人分の空間の雨を防ぐ一方で、下屋は自転車や車、デッキなども広く雨風から守れる点が特徴といえます。
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庇、軒、下屋の使い分け方、設置するメリット
【事例詳細】E様邸(設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE(株))
庇と軒、下屋は使用目的が似ていることから、「どれを使えばよいのか」と疑問に思う方は多いものです。
実は「どれが正解」と言うことはできず、家の形や敷地、暮らし方に合わせて使い分ける必要があります。
それぞれ、代表的な使い分け方、設置するメリットは以下のとおりです。
●庇の利用がおすすめのケース
- 窓や勝手口、玄関などをピンポイントで雨除けしたい
- デザインの関係から軒をなくした住まいで、部分的に雨除けしたい
●軒の利用がおすすめのケース
- 外壁の劣化を抑えてメンテナンス費用を軽減したい
- 特に風雨の強い地域や汚れが付着しやすい環境で外壁を美しく保ちたい
- 夏場、冬場の日射を適切にコントロールしたい
●下屋の利用がおすすめのケース
- 玄関ポーチやウッドデッキなど外部動線を雨から守りたい
- 趣味としてのスペースなど、外壁近くを広く雨風、直射日光から守りたい
- 物干しやバーベキュー、駐輪場など外部空間を使用する目的がある
庇、軒、下屋を設置する際の注意点
【事例詳細】市原Mさんち(設計 アーツ&クラフツ建築研究所)
庇や軒、下屋は設置すると利便性が高まる一方で、設置する際に注意しておきたい点もありますのでご紹介します。
庇、軒、下屋は定期的なメンテナンスがおすすめ
庇と軒、下屋はいずれも屋外に露出する箇所ですので、日光や雨による経年劣化は避けられません。
放置すると建物本体との取り合わせ箇所から雨漏りにつながるケースもありますので、以下の兆候が見られたら点検、メンテナンスすることをおすすめします。
- 塗装の色褪せやはがれ
- 金属部分のサビ
- シーリングの割れ、剥離
- 軒天のシミやたわみ
- 雨樋の詰まりや破損
こうした兆候が現れる前の段階で、点検やメンテナンスする方がお住まいは長持ちしますので、定期的な点検は忘れないようにしましょう。
軒の出しすぎによる日射遮蔽に注意
軒や下屋は夏場の日射を遮る目的で利用されますが、長く設計しすぎると冬場の日射を遮ったり、家の中が暗く感じられるケースがあります。
「パッシブデザイン」の考え方で、夏場冬場の日差しの遮り方をコントロール、最適な軒、下屋の長さを検討しましょう。
▶︎関連コラム:やってはいけない屋根の形とは?理由、後悔を避ける屋根の形のポイントを解説
建ぺい率や建築面積など、法規制への影響を確認する
庇や軒、下屋は、外壁からの出幅や設置方法によっては、建築面積に算入されるケースがあります。
このため敷地に十分に余裕がないケースでは、建ぺい率や建築面積など法規制への影響を確認することが重要です。
また、「大きな軒の下でバーベキューをしたい」といった明確な目的がある場合は、土地取得の段階で設計士に相談し、理想を叶えられる土地なのか確認することをおすすめします。
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近年増加する「軒ゼロ住宅」について
記事の終わりに、近年人気を集めて増えている「軒ゼロ住宅」について、特徴をお伝えします。
軒ゼロ住宅は軒の出がほとんどない家でシンプルかつスタイリッシュな外観が人気を博しています。
▶︎関連コラム:【シンプルな家】外観、内装、間取りのコツを事例付き解説│人気の理由、超シンプルな家など気になる話題もご紹介
軒ゼロ住宅は外壁の汚れや雨漏りに注意
軒が短い住宅は、日射や雨を防ぐ効果を発揮できないことから、以下の点が問題視されることがあります。
- 外壁の汚れ(雨だれ)が目立ちやすい
- 窓の汚れが蓄積しやすい
- 塗装やシーリング材の劣化が進行しやすい
「軒ゼロだから家の耐久性が低い」とはいえませんが、軒がある家よりも外壁の耐久性やメンテナンス性についてこだわった仕様にする必要がある点は確かです。
軒ゼロ住宅のデメリットへの対策
軒ゼロ住宅を採用した場合に後悔を避けるためには、複数の対策を組み合わせることが大切です。
- 外壁材や塗装を汚れにくい(汚れが見えづらい)製品にする
- (デザイン上の問題で軒ゼロにする場合)人通りの少ない方には庇や軒を設ける
- 軒ゼロ住宅の建築実績が豊富な業者に依頼する(ノウハウが蓄積されている)
- 定期点検や再塗装といった維持管理が容易な仕様にする
このように、軒ゼロ住宅にあこがれている方は、見た目のデザインに加えて、雨の降り込み方や日射の取り込みといった点までこだわって設計しましょう。
まとめ|庇、軒、下屋の適正な使い方で雨や日差しをコントロール
【事例詳細】H様邸(設計:奥野公章建築設計室 写真:中山保寛)
庇、軒、下屋といった要素はいずれも、住まいを雨や日差しから守り、耐久性や快適性を高めるための重要な要素です。
あらためて、それぞれの特徴をご紹介すると以下のとおりです。
- 庇:必要に応じて設置する、小型の屋根
- 軒:屋根を大きく張り出して外壁全体を守る
- 下屋:大屋根とは別途設ける屋根で、一般的には庇より大型
なお、建物本体と庇、軒、屋根の取り合い箇所の雨漏り対策やメンテナンスといった注意するべき点もありますので、目的に合う仕様を採用することが重要です。
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